生誕祭の配布物は「その場で渡して、持って帰れるもの」から考える
配るものは飾るものと違って、人の手に渡ってその人の帰り道を一緒に移動します。通らないといけない条件は三つです。
- 当日その場で手渡して完結する説明を足さずに渡せて、受け取った人がその場で困らない。案内が要るものは列が止まる。
- 持ち帰れてかさばらないかばんに入る、折れない、他の荷物とぶつかっても平気。帰りの荷物が増える前提で選ぶ。
- 当日までに現物を確認できる手元で見て、文字と色を自分の目で確かめる時間を日程の中に取る。
この三つを通る品目は多くありません。ステッカー、缶バッジ、アクリルのキーホルダー、ポストカード、ミニタオル。だいたいこのあたりです。
品目を先に決めても話は進みません。同じステッカーでも、一人ずつ手渡しするのと受付に置くのでは必要な数が変わります。決める順番は、「いつ・誰に・何個くらい」が先で、「何を」はその後。これが言えれば、品目は候補から選ぶだけです。
何個作るかは「来る人数」より「余ったらどうなるか」で決める
個数の話で最初に出るのは「何人来るか」ですが、来る人数は当日まで確定しません。参加表明の数は上限の目安にはなっても、根拠にはなりません。
基準を置き換えます。判断するのは「何人来るか」ではなく、余ったときにその余りがどうなるかです。余りが使えるなら多めに作れる。使えないなら、増やした分がそのまま損になる。なお、作れる数の下限は品目で変わります。自分では小さい数だと思っても、その数のまま聞いてもらって大丈夫です。
そして余りを殺す最大の原因は、デザインに入れる日付と回数です。年月日や「第〇回」を刷り込むと、そのグッズはその一日しか出せないものになります。当日に配り切れなかった分は、翌週には配れない。次の機会にも回せない。箱に入ったまま置き場所だけを取ります。日付と回数を抜いておくと、同じものが次の機会にも使えて、当日来られなかった人への後日渡しにも回せる。日付を入れるかどうかは見た目の好みに見えますが、実際には「余ってもいい形にするか、余ったら終わりの形にするか」を決めています。記念性を残したいなら、本体から日付を外して、添える台紙やカードの側に置く手もあります。
足りないのと余るの、どちらが取り返しやすいかも考えます。足りないのは当日その場では取り返せません。追加で作っても間に合わず、受け取れなかった人がそのまま残ります。余るほうは、日付が入っていなければ持ち越せます。だから余っても死なない形に先に寄せてから、気持ちよく多めに振るという順番になります。
もう一つ、数を読めなくするのが種類を増やすことです。選んでもらう形にすると、どれがどれだけ出るかは当日まで分かりません。均等に出る前提なら余り、人気の一つに寄れば足りない。初めてなら種類は絞り、全員に同じものが渡る形にする。
その絵と文字、配っていいかを先に確かめる
デザインは、出どころで分けると判断が早くなります。自分たちで描いた絵、自分たちで撮った写真、自分たちで組んだ文字。ここまでは、そのまま進められます。公式が出している写真やロゴは、そのままでは進めません。
うちが扱うのは、無地のものに自分たちで用意した絵や文字を入れる形だけです。既製のデザイン品や、権利が他の人にあるキャラクターが入ったものは扱いません。使いたいものがそこに入るなら、権利元への確認からです。確認が取れないなら、自分たちで用意した絵と文字だけで成立する形に寄せる。発注の直前に分かると日程が崩れるので、品目を選ぶ段階で確かめます。
一番やりたいのは、推しの名前や活動名を入れること、顔を自分で描いて入れることだと思います。自分で描いた絵や組んだ文字という点では進められますが、名前や活動名の扱いは所属や契約の側で決まっていることがあり、確認の対象になりえます。無料で配るのか、代金を取って売るのかでも扱いは変わりえます。確認が取れるなら取る。取れない前提で進めるなら、イニシャル、記号、幹事側で作ったモチーフなど、名前そのものに寄りかからなくても成立する形に寄せておく。
同じタイミングで確かめるのが、名前の表記です。ニックネームの書き方、ローマ字の綴り、大文字と小文字、記号や空白の有無。表記は幹事の間でも割れていることがあり、誤字は刷ると直せません。確定の前に声に出して読み、その界隈を知らない人――家族でもかまいません――に文字だけ見てもらうと、見慣れて見えなくなっていた間違いが出ます。
揉めないために、作る前に決めておく二つ
有志で立てる生誕祭は全員が対等で、決める人が生まれにくい。誰も反対していないのに決まっていない状態が続き、気づくと日程だけが減ります。発注の前に決めるのは二つです。
一つ目は、お金を誰が決めるか、いつまでに決めるか。金額の話ではありません。決定者と期限が空白のまま発注に進むと揉める、という話です。「みんなで決める」は、決まっていない状態と同じです。決める人の名前と、決める日。この二つが埋まれば先に進めます。
二つ目は検品です。荷物を受け取る人、数を数える人、刷り位置のずれや汚れ・欠けを見る人。一人が全部でもかまいませんが、空いていないことが大事です。不良や入れ忘れ、数量違いは出る前提で組みます。「受け取ったのは誰で、検品するのは誰か」が決まっていないと、荷物が誰かの家に置かれたまま当日を迎えます。係ではなく名前で決めておく。うちも、この担当が決まってから発注に進むことにしています。
この二つを、全部有志の中で持たなくてもかまいません。決める役は中に置き、荷物の受け取りと検品だけを外に出す形もあります。グッズの発注を丸ごと任せるやり方も含めて、どこまでを自分たちで持つかは選べます。
日程から逆算して、間に合う形にする
うちの工程は、デザイン確定 → サンプル → 本生産 → 検品 → 納品の順です。本発注の前に、必ずサンプルを取ると決めています。文字の細さや位置、色味は現物でないと分かりません。だから逆算の起点は「当日」ではなく「サンプルを見てOKを出す日」です。当日から数えると、サンプルを見る時間が最後に押し出されて消えます。
このページには、日数を書いていません。品目と数で変わるので、ここに並べた数字が当てになるのを避けたいからです。数字で答える代わりに、残り何日あるかを最初に言ってもらえれば、その日数で間に合う形から逆に提案します。品目を替える、デザインを単純にする、当日渡しと後日渡しに分ける。残り日数で取れる手は変わります。
止まるのは、だいたい二箇所です。一つはデザイン確定の遅れ。文字の表記が決まらない、権利の確認が済んでいない、最終案が選べない。どれもサンプルに進めないので、後ろが動きません。もう一つは検品の担当が決まっていないこと。生産は進むのに、荷物が届いてから止まるので気づくのが遅い。
最初のご相談で、うちが伺うと決めているのは次の五つです。全部埋まっていなくても動き出せます。
- 何を品目の候補。決まっていなければ「手渡しできて持ち帰れるもの」でよい。
- いつ生誕祭の日。動く可能性があるなら、その幅も。
- 誰に来る人の範囲と配り方。全員に渡すのか、受付に置くのか。
- 何個くらい確定した数ではなく幅で。上限と下限の見当があれば足ります。
- デザインのデータはあるか自分たちで用意した絵や文字か、まだ何もないか。形式は分からなくてかまいません。
この五つをそのまま送れば話が早いです。書き方の例は相談のしかたをまとめたページに置いてあります。